Eddie Henderson

Eddie Henderson - So What (Eighty-Eight's VRCL 6006)

若いころマイルスにあこがれて遂に本人の前でトランペットを吹いて聞かせるチャンスを得たエディ少年。
その時マイルスの言葉が「なかなか良いけどそれは俺そのものだ!」だった。
それも今では懐かしいエディーのマイルス特集アルバム。
マイルスと競演歴のあるボブ・バーグも参加していますが、この作品を録音した年に他界してしまいました。
ちょうどその時来日中だったエディ自身から「昨夜NYから連絡があり、
ボブが夫婦でドライブ中にコンクリート・ミキサー車に
衝突されて亡くなったそうだ。」と聞かされました。
アルバム・ジャケットの路上で白く煙る蒸気(?)がボブとマイルスの霊のように見えてきます。
私はマイルスの"It Never Entered My Mind"が大好きなので、
エディに「この曲を時々演奏しますか?」と尋ねたら、
「それはマイルスのものだからあまり演奏しない」と返事が帰ってきました。
自身も偉大なトランペッターである今、マイルスの後継者的扱いはエディにとって必ずしも心地よくないのだろう。
マイルスのことは尊敬しているが、俺は俺だということだろう。
おそらく製作者側からの企画でこのアルバムが録音されたのだろうが、
エディ自身はマイルスに敬意を表するアルバムとして残すのも意義あるものだとOKしたのだろうか?
このアルバムの前にあるレコード会社からフュージョン系の有名な某ミュージシャン達と
レコーディングする企画があったそうだが、あっさりと断っている。
このアルバムが発売される前に私の車でエディご夫妻達と大阪から四国へ出かけた事がありました。
狭い上に渋滞での長時間ドライブにエディは愚痴の一言も漏らさずにニコニコしていました。
その車中、新しいアルバムのデモCDだと聞かせてくれたのがこのアルバムだったのです。
さて聞いてみましょう。

1曲目はPrince of Darkness
テーマの後、ピアノ、テナーサックス、トランペット、ドラムとソロが続きます。
シンプルなメロディーの間を埋めるようにビリー・ハートのドラムがプッシュします。
エディのソロのバックでは特に多彩な奏法になり、そのままドラムソロへと突入します。
オープンで吹くエディはエキサイティングな部分からコントロールの効いた部分まで巧さを聞かせてくれます。

2曲目は On Green Dolphin Street
まずはキコスキーがお馴染みのメロディーを美しく弾きます。合わせてエドのベースもシンプルに絡み、
ドラムのシンバルからお待たせしましたと言わんばかりにテーマに入り、エディの登場です。
ミュートが気持ち良いですねぇ。皆さんこれを期待していたんですよね。
続くキコスキーのソロも弾きすぎずに心地良いです。またエディのミュートが出てきます。
この曲ではドラムはビクターに変わっています。
ラストのテーマは不鮮明なまま曲は終わります。
いつの間にか終わってしまうという感じがたまらないですね。

3曲目はFootprinps
1曲目と同じ路線のショーターの曲です。VSOPのイメージがありますね。
ベースのパターンがこれでもこれでもかと押し寄せてきます。
フリューゲル・ホーンに持ち替えたエディーがおおらかにメロディーを奏でます。
続くキコスキーがガンガン弾きまくります。
ビクターも合わせて大いに暴れます。
ここで初めてエドのソロが入ります。
先ほどまでのパターンから開放されたかのように自由に弾きます。
そしてまたパターンに戻るとエディの登場です。
最後にはミュートでクロージングへと消えていきます。
ローランド・カークとまではいきませんが、楽器を変えたり、ミュートを着脱したり、
エディは1曲の中ですばやくチェンジします。

4曲目はWell, You Needn't.
ご存知、モンクの曲です。
ドクターでもあるエディは、かつてモンクが入院した際、治療に関わった事があります。
いきなりエディからスタートします。
マイルスもそうであったようにここでもハイ・スピードで突っ走ります。
キコスキーのソロも挟んで一気に駆け抜け、
ビクターの早いシンバルワークと共にあっという間に終わってしまいます。
後に残るシンバルの余韻が闇に漂います。

5曲目はSo What
アルバム・タイトル曲です。
エドのベースからスタートしてビリーのドラムがそれに絡み、
短いテーマの後にボブのサックスが先行します。
まさかこの7ヵ月後に自分が51歳で他界してしまうとは彼に知る由もないでしょう。
探りながら進むように入ってきてやがて熱く燃焼していきます。
後ろのビリーも、もっともっと行けと叩き
続くエディも強弱激しく、余裕のソロを聞かせてくれます。
ビリーはもちろんエドもそれを煽り立てるように力強く押します。
エディからキコスキーへつなぎ方もカッコいいですね。
去っていくものと入ってくるもののスリルが味わえます。
エドのサインにより、曲はエンディングを向かえ、
5人が絡み合いながら空中分解するように終わります。

6曲目はOld Folks
静かにピアノのイントロから始まり、ベースが絡み、
エディがフリューゲル・ホーンで美しくメロディを歌います。
やがて、このアルバムで初めてブラシがビクターによって控えめに入ってきます。
エディはどこまでも綺麗に優しく歌い続けます。
ここでもやっていますが、エディはバラッドの時によく、
楽器の中を息が通り過ぎるのではなく、その中に息を留まらせるような
小さな暖かい音を出します。
キコスキーのソロを挟んで、今度はミュートをつけてエンディングへと
丁寧に丁寧に音を繋いでいきます。

7曲めはSomeday My Prince Will Come
この曲の耳慣れたいつのもパターンではない斬新なベースとドラムがリズムを刻む中、
ピアノが入ってくるとやがてミュートがこちらは耳慣れたメロディーを聞かせてくれます。
リズムの処理の仕方が新鮮ですね。エディ流の新しい「いつか王子様が」です。
エドとエディのやり取りがなんともスリリングです。

8曲目はAll Blues
この曲もいつもと違うパターンで始まります。
ミュートをつけていたのがやがてオープンになり力強くなっていきます。
引き継いだボブも豪快なフレーズで唸ります。
その後のキコスキーとビリーの駆け引きも迫力満点ですね。
後半のエディとボブの絡みもスリル満点です。
終わり方も個性的ですね。

9曲目は'Round Midnight
ミュートでスタートし、やがてオープンのフリューゲルホーンになります。
エディの音に合わせてビリーがローリングで答えます。
そのままボブも同じ音で受け継ぎます。
キコスキーのソロになるとビリーはシンバルの連打で答えます。
ラストはふたたびミュートでアルバムのラストを締めくくります。

さて、如何でしたか?
マイルスゆかりの曲ばかりですがエディ流のアレンジがされており、
マイルスへの尊敬とエディらしさを見事に主張したすばらしいアルバムでしたね。

Eddie Henderson (tp,flh)
Bob Berg (ts)
David Kikoski(p)
Ed Howard(b)
Billy Hart (ds) on 1,5,8,9
Victor Lewis (ds) on 2,3,4,6,7

Recorded on March 13 & 14, 2002at the Avatar Studio, New York
Produced by Yashohachi "88" Itoh

(1) Prince of Darkness (Wayne Shorter) 5:37
(2) On Green Dolphin Street (Ned Washington, Bronislaw Kaper) 6:41
(3) Footprinps (Wayne Shorter) 8:12
(4) Well, You Needn't (Thelonious Monk) 4:01
(5) So What (Miles Davis) 6:17
(6) Old Folks (Willard Robinson) 6:33
(7) Someday My Prince Will Come (Frank Churchill) 4:47
(8) All Blues (Miles Davis) 7:02
(9) 'Round Midnight (Cootie Williams, Thelonious Monk) 7:13

このページはエディ・ヘンダーソン本人の承諾と協力を得て作っています
This page was written with Eddie Henderson's consent and cooperation.